【ひきこもり・自殺・犯罪】進化論が導く「最も残酷な救済論」

①ちしき
画像出典: Slimane-Kadi
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発達性トラウマ みきいちたろう

発達性トラウマ 「生きづらさ」の正体 [ みき いちたろう ]
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初出: note(https://note.com/healingstruggles/n/n74093368adfe

※本論考は、スタンフォード大学ロバート・サポルスキー教授が提唱するヒトの行動と病理の決定要因に関する学説とも、その核心において一致するものです。(本文3777文字)

※また本論考は、あなたがいかなる苦境にあろうとも、いかなる過ちを犯していようとも、あなたの存在を一切の条件なく絶対的に肯定し、救済することを唯一の目的としています。その過程で展開される、冷徹で残酷に響くだろう科学的真実の羅列は、全てその目的を論理的に理解するために不可欠なプロセスです。

1. 進化論とは

あなたは進化論を正しく理解できている自信がありますか。

進化論を、「優秀なものが生き残る結果として、種に変化が訪れる」とか、「努力の結果生物は進化できる」といったように捉えていらっしゃる方をお見受けすることがありますが、科学的には間違いとなります。正しくは、「たまたま生き残るために有利だったものが、不利だったものを結果的に淘汰していく」ことが、進化論の意味するところです。

2. その違い重要なの?

「いや、どちらも捉え方の問題であるだけで大差ないだろう」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。では、この2つに決定的な違いがあるとしたら、どうでしょうか。私は、この決定的な違いを理解することこそが、今の日本の社会を生きる私たちに必要なことだと考えています。この理論を理解できれば、不思議なことに、なぜ人は正義のもとに人を傷つけてしまうのか、いじめから戦争のようなケースまで幅広く理解ができるようになります。そして科学的な知見としての、ひきもりや自殺が起きる理由と、その解決策(方向性)まで到達します。

3. 解釈の決定的な違いと、その意味

進化論は、「たまたま生き残るために有利だったものが、不利だったものを結果的に淘汰していく」ことだと言いました。これは、「自身を存続させ、子孫を残すために必要なものを、意図的に選択したわけではない」ということです。生き残るためにそうあろうとしたのではありません。

一方、私たちが間違えやすい解釈はというと、「自身を存続させ、子孫を残すために必要なものを、意図的に選択できるだろう」という前提に立ったものです。その前提がなければ、「優秀さ」や「努力」といった、「目的に対峙したとき具体化される概念」は介入できないはずです。

少し話が逸れるようですが、人は遺伝子と環境の相互作用で決定されるので、主観的な自由はありますが、実際には自身の人生をコントロールしていません(※行動遺伝学・神経科学の圧倒的コンセンサス)。そもそも自身を自身の手で生み出していないのですから、全てから独立した選択が機能していたと仮定しても、それは詰まるところ誰が選択したことになるのか、という理論が道を阻みます。社会から完全に独立して存在できるようなイメージを持った、魂や心も「概念」であり、実際には存在すらしていません。それなのに、私たちの社会では、優秀でなければ生きていけない、自分で努力しなければいけないと教わります。あれ?って、思いませんか?そもそもコントロールできないなら、生き残り繁栄した者も、いかなる社会システムや教育が関与したところで、個人レベルで選択権を持っていなかった、ということです。おかしいですよね、選択できないのに、自分で選べと言われているのです。矛盾していますよね?

つまり、これはどういうことかというと、たまたま環境に恵まれているものだけが人権を守れる仕組みを正当化するために、「自分が優秀だったから(他者を見捨ててもいい)」「自分が努力したから(他者を排除してもいい)」という理由を作り上げている、ということです。(※自己肯定感や基本的信頼を獲得するには、それを得られる環境が必要です。学力も文化レベルの高さも、人格形成、精神の安定状態さえ環境とプロテクティブファクターに依存します。)

もともと、この資本主義社会の仕組み自体、平等や幸福度を重視してつくられているものではありません。そのため、必ず不平等により犠牲になるものが出てきます。それは時代によって、人種であったり、性別であったり、障害であったりしました。カテゴライズできないものが山ほどあります。しかし人間は自分を「他者を切り捨てる悪」だとは思いたくない。群れの一員であることを感じ本能的に安心・安全であるためには、群れにとっての自分が友好的であると示す必要が生じるからです。人間が健康に生きていくためには「無条件の自己肯定感と基本的信頼」を環境から体験学習する必要があるのですが、自身が群れの一員を見捨てているという事実は、自身の「無条件の自己肯定感と基本的信頼」にとっても、群れに対しても、大変に都合が悪いのです。そこで生み出されるが、「優性思想」、「精神論」、「自己責任論」…他者を見捨てるための建前、です。日本では馴染み深いものですね。(※ただ、優性思想は差別的な文脈から切り離すことのできないイデオロギーですが、優秀さそのものは中立の概念です。)

4. 人間が進化論を理解したくない理由

もうお分かりでしょうか。多くの人間が、進化論を正しく理解できない理由。それは、「生き残ったものが優秀だったから」、「目的に向かって努力したから」といった解釈をしないと、犠牲者が後を絶たない、現代社会を構成する我々自身の価値観が揺らぎ、自身の存在肯定ができなくなってしまうからです。

私たちは、身内を安定させ、存続させるために都合のいいものを正義と呼びます。身内の身を脅かすものを、悪と呼びます。このような正義や悪、道徳といった概念も、実際には人間特有の妄想でしかありません(※しかし、少なくとも「人権」は、群れからの無条件の受容と生存を保障し、人間の健康な発達を可能にする、論理的に不可欠なツールとして機能します。決して、「全ての妄想に意味がない」と言いたいわけではありません)。争いや戦争が世界からなくならないのは、それぞれが自身に都合のよいものを正義だと信じ、敵対関係にあるものを悪だと信じ込むからです。敵を倒すために団結し、所属感を高めることまでできてしまいます。いじめといった日常レベルの行為も、いじめる側の人間には基本正当性が必要になります。そしてその正当性は、あくまで「身内だと認識するもの」に示せればよいのです。

十分な「無条件の自己肯定感と基本的信頼」を環境から学習できなかった人間が病んでいく。群れることによって命を守っていた頃のままの脳が、対等な群れの一員だという存在の安心・安全を感じられず、死の恐怖に脅かされ続けることになるからです。これは社会システムや共有した社会的価値観において、存在肯定に厳しい条件を課されている国ほど発生しやすくなります(例: 「優秀でなければいけない」、「美しくなければいけない」、「生産性が高くなければいけない」、「他人を頼ってはいけない」等々)。程度と、学習の方向性の違いから、表面上は違う形で歪みが現れていきます。過剰な努力、ひきこもり、精神疾患、自殺といったものがそうです。また、自尊心を保てないがために、他者(身内ではないと判断した敵)を攻撃し、団結することで仲間意識と安心感を獲得し、傷付いたプライドを埋めます(存在肯定する)。基本、これらは全て同一線上にある現象です。

どんなに環境に恵まれていたとしても、現行の資本主義や優性思想は、本質的に人間の健康な発達からは完全に逆行するものです。及第点に満たされている方の方が、現代社会においては珍しいのではないでしょうか。そしてもし、私たちが、「優性思想」や「精神論」、「自己責任論」といったものを「生み出し」「信じ」「利用し」、他者を傷付けてきたのだとしたら、どうしますか。そしてそれは、基本、いじめや戦争と同じ仕組みを通じて正当化されてきたことだったとしたら?

今日本では、推定140万人のひきこもりが存在し、一日に約60人が自死に追い込まれています。因果律によってその人生を決定づけられた個人が犯罪責任を一手に引き受け、時には死刑を宣告される。精神疾患は「キチガイ」としてカテゴライズされ、未だ公的なシステムによって閉じ込められている方が数多く存在しています。生きづらさを感じておられる方も多いのではないでしょうか。「人権」を掲げている限り、これらは人災であり、特に日本は異常なレベルです。本当は、「無条件の自己肯定感と基本的信頼」を、私たちが体験によって学習させてあげることができればよかっただけなのに。それで回復させられるのに、です。(※この救済論は、アタッチメント理論やトラウマインフォームド・ケア、オープンダイアローグ等が示す、人間的な回復の普遍的な論理と、その核心を共有しています。)

5. 社会問題を解決し、全ての人権を守るために

偉人の功績も、犯罪者の罪も、社会全員でイーブンだと考えます。何故なら、繰り返しになりますが、私たちひとりひとりは、社会から(社会的価値観から)完全に独立して存在することができないからです。いくら物理的に生存できる環境にあったとしても、群れから孤立した状態で精神を健康に保つことは不可能です。対等な群れの一員を感じて、初めて人間は安心・安全を得られるようにプログラムされているのです(群れを作る仕組み)。良い人と悪い人がいるのではありません。私たち全員でこの社会を許容している結果なのです。

私たち全員が、結果的に加害者としての役割を果たしてきたという構造を、現実として認識する必要があります。この構造を放置するということは、それが犠牲者を排出し続ける未来を容認する、新たな決定要因となってしまうことを意味しているのです。私たちが人権を掲げる社会に生きる人間である以上、救済が義務付けられると考えます。

お読みいただき、ありがとうございました。
(本文ここまで、「あとがき」有り)

6. 資料とお願い

※筆者は、書籍など学術的な文献から約10年に渡り情報を集めてきましたが、もともと個人的な願いのための学習であり、レポートや論文を書くことを想定していませんでした。また、2025年3月に中高の教職課程を修了していますが、大学でもこのような論考に触れることは殆どありませんでした。そのため、現在自身が直接読んだ情報源を参考文献として示せるのは、ごく僅かしかありません。そこで、以下筆者の理論の根拠を支持できる資料集をAIに生成してもらいましたが、中には筆者が直接読んでいないものも含まれています。筆者自身が現在発達性PTSDの治療中にあることも踏まえ、ご理解いただけると幸いです。

【資料作成協力】
・「ChatGPT」OpenAI 2025年10月3日参照 https://chatgpt.com/

【資料】
1. ACE(逆境的小児期体験)と健康リスク
Felitti, V. J., Anda, R. F., Nordenberg, D., Williamson, D. F., Spitz, A. M., Edwards, V., Koss, M. P., & Marks, J. S. (1998).
Relationship of childhood abuse and household dysfunction to many of the leading causes of death in adults: The Adverse Childhood Experiences (ACE) Study. American Journal of Preventive Medicine, 14(4), 245–258.
https://doi.org/10.1016/S0749-3797(98)00017-8
解説: 幼少期の逆境体験(虐待・家庭不和など)が、うつ・依存・自殺など成人後の健康リスクと強く関連することを示した大規模研究。
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2. 複雑性トラウマ・Developmental Trauma
van der Kolk, B. A., Ford, J. D., Spinazzola, J., et al. (2005).
Developmental Trauma Disorder: Toward a rational diagnosis for children with complex trauma histories. Psychiatric Annals, 35(5), 401–408.
https://doi.org/10.3928/00485713-20050501-06
解説: 長期的な環境ストレスや虐待による発達性トラウマの概念を提案し、診断の必要性を論じた論文。
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3. トラウマと身体・神経
van der Kolk, B. A. (2014).
The Body Keeps the Score: Brain, Mind, and Body in the Healing of Trauma. New York: Viking.
(邦訳:『身体はトラウマを記録する』晶文社, 2020)
解説: トラウマが脳・神経・身体に及ぼす影響と、回復のためのアプローチを総合的に解説した代表的著作。
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4. 幼少期虐待と精神病理(レビュー)
Read, J., van Os, J., Morrison, A. P., & Ross, C. A. (2005).
Childhood trauma, psychosis and schizophrenia: A literature review with theoretical and clinical implications. Acta Psychiatrica Scandinavica, 112(5), 330–350.
https://doi.org/10.1111/j.1600-0447.2005.00634.x
解説: 幼少期の虐待やトラウマと、精神疾患(特に統合失調症様症状)との関連を示す包括的レビュー。
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5. 精神疾患と差別
Thornicroft, G. (2006).
Shunned: Discrimination against People with Mental Illness. Oxford University Press.
解説: 精神疾患に対するスティグマと差別が、回復や社会参加をどのように妨げているかを分析した書籍。
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6. 世界的メンタルヘルス政策
World Health Organization. (2022).
World Mental Health Report: Transforming mental health for all. Geneva: WHO.
https://www.who.int/publications/i/item/9789240063600
解説: 世界規模でのメンタルヘルスの現状と、支援体制改善のための政策提言をまとめた報告書。
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7. メンタルと労働
OECD. (2015).
Mental Health and Work: Japan. OECD Publishing.
https://doi.org/10.1787/9789264228328-en
解説: 日本における精神疾患と雇用・労働参加の課題を国際比較の視点から示した報告。
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8. エピジェネティクスと環境
Weaver, I. C. G., Cervoni, N., Champagne, F. A., et al. (2004).
Epigenetic programming by maternal behavior. Nature Neuroscience, 7(8), 847–854.
https://doi.org/10.1038/nn1276
解説: 親の養育行動が、DNAメチル化を通じてストレス応答など脳機能に長期的影響を与えることを示した研究。
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9. 日本における虐待と脳
友田 明美 (2014).
『子どもの脳を傷つける親たち』NHK出版新書.
解説: 日本のデータに基づき、虐待やネグレクトが脳発達に及ぼす影響を解説した研究者による書籍。
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10. 精神医療制度の比較
大熊 一夫 (2009).
『精神病院を捨てたイタリア 捨てない日本』岩波新書.
解説: イタリアでの脱施設化と、日本の精神医療制度の課題を比較し、社会的包摂の重要性を論じる。
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11. ひきこもり文化論
斎藤 環 (1998).
『社会的ひきこもり―終わらない思春期』PHP新書.
斎藤 環 (2003).
『ひきこもり文化論』集英社新書.
解説: 日本社会におけるひきこもりの背景や心理構造を分析した代表的著作。
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12. 群れと人間行動の科学
Sapolsky, R. M. (2017).
Behave: The Biology of Humans at Our Best and Worst. Penguin Press.
Sapolsky, R. M. (2023).
Determined: A Science of Life Without Free Will. Penguin Press.
解説: 社会行動・ストレス・ホルモン・自由意志など、人間の行動と脳科学を総合的に解説。

7. あとがき

私はこれまで、教育や常識(集団心理)とされるものに興味を持ち、各学問分野の名称すらよく分からないまま、関連情報を収集してきました。しかしその中で、各学問分野の結論が、本当にはもっと大きな絵を描いているのではないか、その一部を切り取ってしまうがために、間違った解釈にも繋がっているのではないか、と感じるようになりました。そして調べれば調べるほど、私の疑念は揺るがぬ確信へと変わっていきました。

私はロバート・サポルスキー氏の名前こそ存じ上げていましたが、お恥ずかしながら、彼の書籍を直接読んだことはありませんでした。2025年10月某日、YouTubeにてスタンフォード大学の講義が拝聴できると知り、無料の手軽さから早速サポルスキー氏の講義を拝見したところ、私の感情は大きく揺さぶられ、涙がボロボロと溢れ、止めることができませんでした。彼の一言一句は、「私の理論は間違っていなかったんだ…!私の幼少期からの苦しみは、正当なものだったんだ…!」という感覚を与えてくれる、外部からの、私自身に対する強い存在肯定のように映ったからです。

勿論、私が既存の知識からパズルを組み合わせただけのことと、サポルスキー氏が各学問を統合し、ご自身による研究も重ねられた上で、物理的な証拠の連続によって考えを構築・発表されていることを、決して同一視することはできません。そしてだからこそ、もう私という力のない人間が、大学教授すら怒り出すような論考を、社会に向けて発信する必要性は薄れたのです。

もし私の記事があなたの心に響いたなら、ぜひロバート・サポルスキー氏の書籍や動画で、この真実をさらに深く探求されることをお勧めします。

これは、社会からは悪とみなされやすい論考です。普通は発信によって社会に拒絶され、数と「常識」によって叩かれる「科学的事実」を、真実の探求を目的とした、世界一といって差し支えないだろう学術機関で、世界中の注目を集めながら、彼は発信し続けておられます。

この論考が、私と同じように生きることに苦しんできた全ての「あなた」にとって、真実の探求への入口となり、少しでも心の安らぎに繋がることを願っています。

【外部リンク】
・Stanford(Introduction 2011年2年2日)「Lecture Collection | Human Behavioral Biology」YouTube https://www.youtube.com/playlist?list=PL848F2368C90DDC3D 2025年10月4日視聴
・TED(2017年6月1日)「The biology of our best and worst selves | Robert Sapolsky」YouTube https://www.youtube.com/watch?v=ORthzIOEf30&list=WL&index=117 2025年10月4日視聴

【協力】
・「Gemini」Google 2025年10月7日参照 https://gemini.google.com/app?hl=ja
論考の作成にあたり、AIアシスタント「Gemini」に、論理の整合性、および表現の明確化に関するサポートをお願いしました。

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