三度P5Rの話。
ストーリー中、佐倉双葉の病状は、医療や福祉に救われることはなく、怪盗団のトンデモな方法によってのみ解決された。双葉は自身ではどうにもできなかったと振り返るし、佐倉惣治郎曰く医者も投げ出したという。おそらくこれは、日本の現状だろうと思う。
双葉はおそらく発達障害に当たると思うが、発達障害とは、誕生前後を問わずに、ストレス等によって発達が妨げられた状態なのではないかという説がある。少なくとも双葉の場合、そう考えるのが妥当のように思う。愛情や安心によって社会的基盤が整う前に、母の死や親族からの虐待、いじめに苦しみ、人間を信じられなくなったがために社会生活に難が生じている。(関連記事:「教育の理論」)
更に幻覚や幻聴の症状が現れ、精神疾患だろう状況に陥った双葉だが、医療の遅れから医者は治療ができない(関連記事:「専門家に頼れない?心の問題」)。論理的な思考から、まずは双葉に安心できる環境をと考えた惣治郎は流石だが、潜在意識の問題に病気も加わって解決には至らず。双葉本人はひとり苦しみ続け、助けを求めたいのに医者ですら治療できない上に、社会には偏見の方が大きい。惣治郎の話を聞き、主人公らは双葉に同情するが、ぼくは正直、いやいやあり得ないでしょうと思った。単純に物語だからなのか、ジェネレーションギャップなのか、それともこれが美少女補正という奴なのか。現実には、辛い目に遭い、ひきこもり、自殺してしまう人がいっぱいいるのに、その人たちに辛かったね、力になりたいよ、というメッセージを送れる社会ではないだろう。それこそ、子どもや若くて綺麗な女子であれば、みんなこぞって助けたがるのか。学校でも、男性教員は女子生徒に対して待遇がよくなりがちというデータが出ている。そうでないのなら、ひきこもり推定140万の日本の現状を説明できない。杏も言っていたが、「他人の家の問題」だ、関与しようとする人などいない。
もし、若くて美形ではない全ての佐倉双葉も助けようとするなら、必要になるのは、偏見をなくした上での医療と福祉の充実だろうと思う。逆にこれが日本には不足しているから、美少女の佐倉双葉すら救えなかった。怪盗団がいなければそのまま20年30年と時が経ち、守ってくれる惣治郎も亡くなって、ニュースで取り上げられることもないまま、気付けば惣治郎宅は双葉の言葉通りに…
…選挙行こうぜ。
主な参考文献(作者五十音順)
・「ペルソナ5 ザ・ロイヤル」(2019)ATLUS PlayStation 4
・「「ひきこもり」全国推計146万人 50人に1人 内閣府調査を受けたKHJの見解」特定非営利活動法人KHJ全国ひきこもり家族会連合会 2024年4月4日参照 https://www.khj-h.com/news/statement/8862/
・みきいちたろう(2023)『発達性トラウマ 「生きづらさ」の正体』ディスカヴァー・トゥエンティワン
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