広がってほしいと願う知識のひとつに、「幼少期の経験の重要さ」がある。そこで必要なものを満たせないと、アダルトチルドレン、発達性PTSD、愛着障害等と呼ばれる状態に陥る可能性が高くなる。実は、こういった知識は健全な人にも意外と身近な話で、どんな物語でも、知ってさえいれば登場人物理解を助けてくれる。そんな話。
今、「ペルソナ5ザ・ロイヤル」というゲームを遊ばせていただいているが、そういった人間の心理という意味でも興味深いなと思う。それぞれに居場所のない、高校生である主人公たちが集まって…というストーリーだから、心が幼いだけのぼくが共感していいものかわからないけど、これから自分が目指す(気付く?)幸福感とはどういうものなのかを考えさせてくれる。
一方でVチューバーの大空スバルさんの動画を拝見し、同ゲームをプレイしている様子を窺うことでぼっち感を慰めていたのだが、登場人物に対する考察が鋭過ぎる。中でも明智というキーキャラクターがいて、彼はあまり恵まれた環境で育っていないのだが(ネタバレに極力配慮しています)、その明智に対するスバルさんのコメント群(抜粋)がこちら。
- 「明智って多分、すごいスマートに見えるけど内面ぐちゃぐちゃだと思う。」
- 「多分なんか見てる以上にコンプレックス多分めっちゃある。コンプ持ち(は)ねえ、一個のコンプとかだといんだけど、(明智は)ちょっと色々持ち過ぎてて…。」
- 「すげー感情の化身だったんだな、あいつ。」
- 「明智って、ライバルになって欲しいんかなっていう雰囲気はあったけど、なんでそんなに、ただそれだけじゃないというかさ…。」
- 「(ライバル心について)でもそこってやっぱりこう成長するにつれて遠くから見れるようになるというかさ、(中略)でもなんか明智はね、なんかもっと色々ありそう。まぁ明智の生い立ちが実はなんか、実は結構すごかったから。なんかもう凄そう。なんか明智(のこと)全部分かった時に、「あ、明智…!!」ってなりそう。」
今更かもしれないけど、結論をいえば明智は十中八九アダルトチルドレンだ。子どもの頃、必要な愛情を感じられなかった、心の成長が叶わなかった。それは人間の心(脳)にとって自己の存在否定に直結しやすいために、明智は自身のアイデンティティの基礎すら確立できないまま高校生になっている。ゲーム本編でも彼自身の口から語られるように、どうしたら周囲に気に入られるかばかりを気にして生きている。「妄想共有能力」の話でも触れたが、群れを作って安全を確保する人間という生物の性質上、愛されずに育った人間は、孤立という死の恐怖に常時さらされることになる。そしてそこから逃れるため、他者に受け入れてもらうこと、愛してもらうことが生きる上での最重要課題になってしまう。明智はまさにその典型といえる。
スバルさんは、時折明智の言動に当惑した様子も見せながらも、根幹の違うだろう彼の本質を見抜いていたと思う。おそらく彼女は、知識からというより、登場人物の感情に寄り添おうとすることで人物の背景を想像している。相当に感受性の豊かな方なのかなと感じる。
スバルさんのおっしゃるように、明智は、自分ではどうにもできないところで足掻き続けているのだろうと思う。彼は、両親の金銭的・愛情的裕福さがなければ成しづらい学業を、社会に認められたいという欲求と、社会に対する怒り・恨みをもって成立させてしまった。ペルソナで本心を覆い、探偵の実力をもって大人社会にまで食い込み、周囲からの賞賛を浴びる。なのに、それでも彼は幸福に近付けない。なぜなら彼にとっての他者は依然として敵のままであり、人間本来の欲求とは無縁の場所で生きているから。内にあるのは怒りやさびしさだけで、それだけを原動力に復讐への計画を進める。
だから、彼はゲームの主人公である雨宮(仮)が許せなかった。雨宮だって自分と同じように理不尽な目にあっているのに、他人に愛情を与えることができて、素直に受け取ることもできる、つまりは関係を築くことができる。「同じ」であるはずの雨宮は、満たされない自分とは違って、人の中で確かな幸せを感じて生きているのだ。
正確には、雨宮は周囲から愛情を受け取ってきただろうから(少なくとも現在のプレイ状況では断言できない)、二人の基礎は全く違う(勿論受け取っていなくても、100%問題が発生するわけでないだろうと思う。そういったストレス耐性に強い遺伝子もある。けれど例外というのは、基本例外が起こるだけの要素が隠れているから、例外たり得ると考えている)。それでも明智からしてみたら、自分だけが取り残されてしまったように感じただろう。もし、地位や戦う力でも勝てなくなったら、明智のアイデンティティは完全に崩壊してしまう。だから許せないのだ。本当は何処かで雨宮が気に入っているのに、自分の時間(人生)を生きる雨宮が許せない、認められない。
ぼくの考察が正しいかったとして、だからといって何をしても許されるとは言えない。それでも、明智には幸せになって欲しい。だって少なくとも、周囲の大人が幼い頃の明智にちゃんと必要なものを与えていたら、当然彼は追い詰められていなかった。
この作品のことは、これからも時々書きたいなと思う。
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主な参考文献(作者五十音順)
・「ペルソナ5 ザ・ロイヤル」(2019)ATLUS PlayStation 4
・大空スバル(2023年9月24日)「【#22】ペルソナ5 ザ・ロイヤルやるしゅばあああああああああああああああああああああああ!!!!: P5R【※ネタバレあり】」YouTube. https://www.youtube.com/watch?v=qT6rnU6voTY&list=PLOLvMgy3Jf3FKe4QnTGOlhuwQ_4OtMqW9&index=22&t=11889s 2024年10月5日視聴
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