専門家に頼れない?心の問題

①ちしき
画像提供: makabera
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※はじめに
本記事では、筆者の考えを述べるために、日本のメンタルケアの状況について触れています。該当箇所(注が記された個所)では、各参考文献を元に筆者が情報をまとめています

・本文
幼少期の経験等を理由に、今生きづらさ(精神疾患や発達性PTSD、アダルトチルドレン等)を抱えておられる方は多いかと思います。そんな中、日本では「自分自身で知識を身に付け治療する姿勢が重要になる」、という話をしたいと思います。ただ、中には今その気力すらないという方もみえると思いますので、そのような時はどうか自分自身に優しく接しながら、ご無理をされないようにしてください。

なぜ、「自分自身で知識を身に付け治療する姿勢が重要になる」のか。結論からいえば、メンタルケアに関して、日本は後進国と言わざるを得ない状況にあるからです。特に日本の精神科医療は、世界から50年遅れている、と揶揄されるほど。多くの精神科医が適切な治療を施せない(薬物療法への依存、患者の長期拘束等)、現場によっては更なる人権侵害(虐待等)が起こっている、といわれます。
またカウンセリングの質に関しては、明確な資料がないため断言できませんが、医療に逆行してカウンセリングや教育だけが独立して世界レベルだと考えることは難しく、ひきこもりや自殺者数を考慮すると、日本のメンタルヘルスの課題は深刻だといえます。多くの場合、カウンセリングには保険が適用されず、実力のあるカウンセラーほど高額な支払いが発生する傾向にあります。精神的苦痛に対する偏見と相まって、利用するための敷居も低くはないでしょう。

なぜこのような現状があるのでしょうか。それは、日本の精神科医療の成り立ちを知ることで見えてきます。

第二次世界大戦の影響を受け、当時精神科医療を民間に託したかった日本政府は、運営側にとって有益な条件となる精神科特例(医師や看護師の数を少なくても良いとするもの)や給付金によって、民営化を推進しました。その結果、本来多くの人員が必要になる精神科において、患者の治療よりも、いかに利益を得るかが追求されるようになっていきました。精神病床の9割が民間となり、長期入院患者は増えていきます。(注1)

後に、対策も取られます。
たとえば2004年、厚生労働省の精神保健医療福祉の改革ビジョンにおいて、「入院医療中心から地域生活中心」へという理念が示されました。この理念では、患者にとって適切で良質な医療を確保するための指針が掲示されました。
また2017年の「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会」報告書では、地域包括ケアシステムの構築を目指すことが、新たな理念として明確にされました。地域包括ケアシステムとは、高齢者を地域で支援するという考え方を精神障害者にも応用したものです。(注2)人権侵害に当たる社会的入院が、これまで立憲国家で看過されていることだけでも、大問題でした。
しかし、未だ何も変わっていない、という声もあります(注3)。今も尚、改革がなされたと、断言できるような状況には程遠いのです。

更に言えば、これらの悪習を助長する根底には、日本の優性思想や精神論があると考えられます。
恥の文化と称される日本では、江戸時代から障害者を身内の恥として、人の目に付かぬようにと閉じ込めてきました(注4)。時折時代劇で目にする、座敷牢、後の私宅監禁です。第二次世界大戦に入ると、戦争に協力できない障害者は「役立たず」、「穀潰し」と公に批判されるようになり、日本中に優性思想が蔓延しました(注5)。1950年私宅監禁は違法とされるも、先述したように精神科病院でも患者のための医療は提供されておらず、患者にとっての監禁という事実が変わることはありませんでした(注6)。
また、心の問題は脳科学や社会心理学といった科学で説明できる問題であり、精神論では解決できないものです。しかし、日本では今でも、それらを心の弱さだと捉えられてしまうことが多いのです。

「自分自身で知識を身に付け治療する姿勢が重要になる」、というのは、このような歴史が、現時点(2024年)においても影を落としているからです。筆者の個人的な見解として、現在どこの精神病棟へ診察を受けに行っても、よほど即拘束されるといった危険はないと思いますが、保証もできないというのが素直なところです。またこれは事実として、医療関係者の人当たりや人間性がどんなに信頼できるものでも、薬物療法や長期入院だけが提供されるのであれば、適切な医療とは呼べません。病状によっては、医師と世間話をして、薬をもらうだけでも治療に役立つことはありますが、ご自身の状態を知り、照らし合わせてご検討される必要はあるかと思います。

少しずつでも、ご自身自らが知識を身に付け、実践していくことが、状態改善への近道になるといえます。


1 日本医療労働組合連合会精神部会(2017)『精神科医療のあり方への提言』日本医療労働組合連合会精神部会
2 厚生労働省編(2018)「第9章 障害者支援の総合的な推進」『厚生労働白書』平成30年版 485頁-489頁 厚生労働省
3 注1参照
4 「精神障害者の監禁の歴史 精神科医香山リカさんに聞く」NHKハートネット福祉情報総合サイト 2020年6月16日参照 www.nhk.or.jp/heart-net/article/83/
5 「障害×戦争アンコール」NHKバリバラ 2020年6月16日参照 www6.nhk.or.jp/baribara/lineup/single.htm/?i=938
6 注4参照

主な参考文献
・大熊一夫(2009)『精神病院を捨てたイタリア捨てない日本』岩波書店

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